SCIENCE

再生医療とは
再生医療とは、病気や事故などによって失われた身体の細胞や組織、器官の再生や機能の回復を目
的とした医療です。広くは、身体機能の回復訓練であるリハビリテーションや、人工素材からつくる義手、
義足、人工関節など、また皮膚移植や骨髄移植、臓器移植といった生きた細胞の移植なども再生医療
としてあげられます。
再生医療の中でも、近年、培養技術・分子細胞学・生体組織工学・遺伝子工学の発達とともに幹細胞の
研究が盛んになり、幹細胞を応用した再生医療は、特に注目を集めています。 そもそも「幹細胞」は、特
定の細胞に分化(変化)したり、分化前の状態で長期間に渡って自らを再生する能力を備えており、いわ
ば組織や臓器に成長するもとになる細胞です。
再生医療は、私たちが本来持っている自己再生能力を最大限に活用し、負担を和らげることのできる無
限の可能性を秘めた医療といえます。

幹細胞とは
『①様々な細胞に分化する能力(多分化能)』と 『②細胞分裂を経ても、自分と同じ多分化能を持つ細胞
を生み出せる能力(自己複製能)』を併せ持つ特殊な細胞です。この2つの能力により、発生や組織の再
生などを担っています。 発生における細胞系譜の幹(stem)になることから幹細胞(stem cell)と名付け
られました。

幹細胞の種類
成体幹細胞
体内の各組織に存在する幹細胞のことで、造血幹細胞・神経幹細胞・皮膚幹細胞などがあり、限定され
た種類の細胞にしか分化しないものや、広範囲の細胞に分化するものなど様々ある。

② ES細胞 【胚性幹細胞 (Embryonic stem cells)】
受精卵からつくられるES細胞は、体を構成するあらゆる細胞への分化能がある。

③ iPS細胞 【人工多能性幹細胞 (Induced pluripotent stem cells)】
体細胞へ4つの遺伝子を導入することによってリプログラミングを行い、人工的に作成された幹細胞で、
ES細胞のように様々な細胞に分化する事ができる。

現在、臨床応用が最も進められているのは ①の『成体幹細胞』となってます。

理由としては、②のES細胞は他人(非自己)の受精卵を破壊して採取・作製されるという点から、倫理
的問題と拒絶反応の危険性という二つの問題点があり、医療への実用化に至っていません。
また、③のiPS細胞は遺伝子導入等によって引き起こされる細胞の腫瘍化の可能性について指摘され
ており、近年の研究で安全性に関する課題は克服されつつありますが、まだ実際の治療に使用される
までには至っていません。

幹細胞 説明図

幹細胞 説明図


 間葉系幹細胞 (Mesenchymal stem cells)とは
間葉系幹細胞は、骨髄、脂肪組織、歯髄、胎盤や臍帯血等の間葉系組織に存在している成体幹細胞で
あり、骨、軟骨、脂肪等に分化することが知られています。間葉系幹細胞は主に中胚葉に由来する幹細
胞ですが、外胚葉系の神経細胞や、内胚葉系の肝細胞へ分化することも報告されており、胚葉を超えて
中胚葉系ではない組織にまで分化できる分化能を有していることが分かってきています。

脂肪由来間葉系幹細胞の利点
今までは間葉系の幹細胞と言えば骨髄由来の幹細胞でしたが、脂肪由来の幹細胞には、以下の3つの
メリットがあります。

1.他の部位と比べて採取が容易である。
2.骨髄に比べて、単位容積あたり100~1000倍多く幹細胞が含まれる。
3.骨髄由来幹細胞と比べて、多分化能に優れている。