【骨系統疾患の現状と細胞治療の可能性】
高齢化社会において増加傾向にある骨損傷、半月板損傷、リウマチなどの骨に関する病気に対する幹細胞を用いた再生医療に注目が集まっています。中でも変形性膝関節症患者は国内に2500万人はいると推測されており、その内半数以上は半月板損傷だといわれています。現在の治療方法には骨髄刺激療法、骨軟骨柱移植や自家軟骨培養移植、半月板の切除・縫合などがありますが、負担の割には効果が低いなど未だ問題点は多く存在しています。
近年の臨床研究では、変形性膝関節症の患者の膝に幹細胞を移植することにより軟骨の修正、膝の機能や動作能力の改善が確認されており、効果やリスクについての研究進められています。
【現在、治療や動物による研究が行われている機関】
◆ 島根大学 ◆ 東京大学 ◆ 東京医科歯科大学(滑膜由来)
◆ 京都大学(骨髄由来) ◆ 大阪大学(滑膜由来)
【東京医科歯科大学の症例】
半月板切除術の適応となる横断裂、水平断裂、複合断裂、変性断裂などの断裂形態の膝半月板損傷の患者を対象に、半月板縫合術後に滑膜由来幹細胞を投与する臨床研究が行われています。
研究チームは、まず動物実験にて滑膜由来幹細胞の細胞浮遊液を10分間静置すると軟骨や半月板の欠損部に接着し再生させることを確認しました。この結果をもとに、幹細胞による軟骨再生の臨床研究が開始され、多数の例で軟骨欠損部の再生、症状の改善が確認されています。また、幹細胞投与により、周囲の滑膜組織が半月板縫合部に早期から誘導され、縫合後の治癒を促進することも動物実験より確認されました。
これらの研究の成果をもとにして、半月板縫合術の適応を拡大し、半月板縫合術後に滑膜幹細胞を投与する臨床研究が行われています。変性が強い半月板に対しては、これが足場となり、滑膜幹細胞により半月板が再生されることが期待されています。
※ 幹細胞に関する様々な情報は、ヒト幹細胞情報化推進事業(SKIP:https://www.skip.med.keio.ac.jp/)や 日本再生医療学会雑誌、各大学や施設の論文及び記事などを参照しております。