【肺疾患の現状と細胞治療の可能性】
一般的には肺は再生しない臓器として考えられていましたが、1800 年代から動物実験を通して、切除された肺がそれを補うように成長する「代償性肺成長」という現象が確認されているとおり、肺には成熟した個体にも関わらず成長・修復する能力があるという可能性が示唆されてきました。そして最近の急速な再生医療技術の発展により、ヒト肺幹細胞を障害肺に局所注射することでマウスの障害肺が修復・再生することが確認されており、現在でもヒトでの臨床応用へ向けて研究がすすめられています。
【現在、治療や動物による研究が行われている機関】
◆ 千葉大学 ◆ 名古屋大学(歯髄由来)
◆ 釡山大学(韓国) ◆ TLC 日本橋クリニック
【名古屋大学の研究成果】
マウスを使用した動物実験で、血管に注射した歯髄幹細胞及び分泌成分がマウスの急性肺障害治療において多面的な治療効果を示すことが確認されています。
【釡山大学の研究成果】
アレルギー性鼻炎及び喘息モデルマウスを使用した動物実験で血管に注射した脂肪組織由来幹細胞が、好酸球性炎症を抑制してアレルギー症状を好転させ、抗原特異的な 2 型ヘルパー T 細胞による免疫反応を減少させる重要な役割を果たし、アレルギー性鼻炎または喘息予防及び治療剤に有効であることが確認されています。
【TLC 日本橋クリニックの症例】
COPD( 慢性閉塞性肺疾患) と診断された患者を対象に脂肪由来間葉系幹細胞による肺胞の再生治療が行われています。治療の結果、治療前における酸素飽和度は安静時で92~93%、行動時でも92~93%でしたが、治療から12 日後の酸素飽和度は安静時、行動時ともに95~97%と改善していることがわかりました。その後 1年半における経過観察でも順調な回復が確認されています。
※ 幹細胞に関する様々な情報は、ヒト幹細胞情報化推進事業(SKIP:https://www.skip.med.keio.ac.jp/)や 日本再生医療学会雑誌、各大学や施設の論文及び記事などを参照しております。